文部科学省の田中裕一さんから聴いた特別支援教育の現状と未来

「遊びは学び」 

英語で自己肯定感を創る
遊びの時間を提供します。
呉市焼山の子ども英語教室
ミキイングリッシュスクールの
石賀美希です♪

 

小中高に通うお子さんがいらっしゃる皆さんは、「教育改革」や「新学習指導要領」についてどのような印象をお持ちでしょうか?

 

見切り発車の「大学入試改革」に振り回されている高校生や保護者の方もいらっしゃいますよね。

 

ある現役の公立小学校の先生は、新しい英語のカリキュラムについて

 

「5年生から一気にレベルが上がるんですが、このカリキュラムだと英語を習っていない子は付いて来られないです。」と

 

教育格差が生まれることを心配されています。

 

 

日本の義務教育、どーなってんの!?

 

そして、ホームページの「新学習指導要領」についての資料は、文字ばかりで専門用語が多く、数百ページにわたるものもあります。

 

当事者の保護者の方で、これ全部を読む方はおそらくいらっしゃらないのでは?と思います。

 
 

学校や塾の先生だけでなく、保護者にももっと分かりやすく情報開示をして欲しいなあ。

 

 

私の文部科学省に対する印象はこのような感じでした。

 

なぜなら、私の娘は4月から小学校の特別支援級に入学するのですが、
教科書を使ってお勉強だなんて全く想像が付かない状況なんです。

 

このような学習に困る子が、集団生活で勉強中心の小学校で楽しく生活をするにはどうしたらいいのか、特別支援教育の現状について詳しく知りたいと思い、ある研修会に参加してきました。

 

1月12日(日) 呉市の広まちづくりセンター
文部科学省 初等中等教育局 
特別支援教育課 特別支援教育調査官
田中裕一 氏
「新学習指導要領で学習に困っている子のためにできること」
主催:DeCo a BoCo 様

 

なんと、この呉市に文部科学省の方がお話に来られる機会があるというではありませんか!

 

この研修会を企画して下さったのは、ディスレクシア専門の留学支援事業をされたり、日本の学校に海外の発達支援教育を取り入れようと働きかけておられるWorld Link YOUの辻 佑子さん。

 

呉市で文科省の、しかも特別支援教育に従事されている方のお話が直々に聴けるなんて、このような貴重な機会はありません!つじさんに感謝いたします。

 

そして、つじさんの熱意もすごいのですが、田中裕一氏の熱意と責任感も聴講者たちに伝わりました。

 

今回の田中氏の研修会に参加し、私の文科省に対するイメージ(少なくとも特別支援教育に関するもの)が変わり、少し不安に思っていた小学校生活に対する考えも明るくなりました。

 

原因は、私が知らなかっただけ!

 

なので、私がこの研修で学んだことを、保護者としての自身の経験も少し交えながらシェアします。

 

2時間半でとても内容の濃い研修でしたので、内容を集約してシェアすることをお許しください。

 

今回は、ポイントを以下の8つに絞って簡単にお伝えします!

 

①どのような方が日本の特別支援教育をリードしているの?
②公立の学校の「特別支援」って、どのようなものがあるの?
③特別支援を受ける子が必ずしてもらえること
④「新学習指導要領」で何ができるようになるの?
⑤小学校の先生って、発達障がいの知識と理解はどのくらいあるの?研修はされているの?
⑥「医師の診断」がないと特別な支援は受けられないの?
⑦文科省の資料は長くてよく分からない・・・もっと簡単に情報を知る方法は?
⑧最後に、田中氏の研修を受け、発達障がいの子を持つ親としての気付いたこと

 
 

まず、文部科学省で日本の幼~高校の特別支援教育をリードされている田中氏について、簡単にご紹介します。

 

①どのような方が日本の特別支援教育をリードしているの?
 

文部科学省 初等中等教育局
特別支援教育課 特別支援教育調査官

 

田中裕一氏

 

文科省には発達障がい専門の調査官が6名いらっしゃり、その中で幼稚園~高校の特別支援教育を担当されているのが田中氏です。

 

田中氏は、特別支援学校での指導経験の他、障がい者の就労支援に従事した経験もあります。そのため、困っている人たちの現状と、その人たちがどのような支援が必要なのかを熟知しておられます。

 
 

②公立の学校の「特別支援」って、どのようなものがあるの?

 

●通級

 

対象: 小中学校の普通学級に通う障害のある子どもで、対象とする障がい種は言語障害、自閉症、情緒障がい、弱視、難聴、LD、ADHD、肢体不自由及び病弱・身体虚弱

 

支援方法: ほとんどの授業を普通学級で行い、週に1単位~8単位時間、特別な場で指導を受ける

 

●特別支援学級・・・小中学校に障害の種別ごとに置かれる少人数(8人まで)の学級

 

対象障がい種: 知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障がい

 

支援方法: 娘が入学する小学校では、国語と算数のみ支援級で受け、他の教科は普通級で授業を受ける。そして、クラスは知的クラス、情緒クラス、弱視クラスの3クラスがあります。

 
私が公立の小学校に通っていた30~40年前を思うと、こんなにも細やかな特別支援体制が出来たのか!と感激しました。ですが、娘の通う小学校の先生のお話によると、「1クラスで1年~6年生までが一緒に勉強するのですが、年齢的な能力の違いがあり、指導が難しい部分もあります。なので、クラス種で分けるよりも学年で分けて欲しいという要望をしています。」ということでした。
 
この小学校では、児童の年齢幅があることで指導が難しいということが問題であるようですが、学校によってさまざまな問題があるはずです。現場の先生たちが声を挙げ、それが早く改善できるような体制になって欲しいです。
 
 

●特別支援学校・・・比較的障害の重い子どもを対象として教育を行う学校。小中学部では、1クラス辺り6名で、重複障がいの場合は3名。

 

対象障がい種: 視覚障害、難聴障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱)

 

指導方法: 私が見学に行った小学部では、基本的に教科書は使わない体験型授業。理科の授業で虫取りや畑のトマトの観察をしたり、社会ではスライドを使って伝統的な行事の過ごし方を学んでいました。

 

小学校の「特別支援級」の指導と大きく違う点は、教師の指導方法。「特別支援学校」の教師は、顔の表情、声のトーン、ジェスチャーを大きく使い分け、物事や状況の理解が難しい子どもたちにも分かりやすい指導がされているなと感じました。

 
 

③特別支援を受ける子が必ずしてもらえること

 

個人に合わせた特別な指導計画必ず立ててもらえます。

 

ですが、田中氏によると、調査で「対象者でも指導計画が作られなかった」という例もあるそうです。

 

これ、知らなくて指導計画が立てられなかったら、分からないまま封印されてしまいますよね。
私は知らなかったです!

 
 

④「新学習指導要領」で何ができるようになるの?

 

これは、特別支援を受ける場合も、そうでない場合も同じです。

 

新学習指導要領の3本柱

 

何ができるようになるか

 

「社会に開かれた教育課程」の実現
(地域の協力を得ること)

 

田中氏の例:

 

特別支援学校で、スーパーでお買い物をするという授業がありました。

 

ある子は、必要なものを選んでカゴに入れ、袋詰めも上手にできます。

 

ですが、レジで自分の順番が来た時、店員に「カゴを出してください」と言われても、
カゴを引き渡すことがどうしてもできませんでした。
そして、カゴを出さずにずっと突っ立っているという状況が何度も続きました。

 

なので、田中氏は事前に店長に「すみませんが、今日は何も言わずに3秒だけ待ってやってください。」とお願いをしました。

 

そして、その日、店員さんは10秒以上何も言わずに待ってくれたそうです。

 

そうすると、その子は初めてレジ台にカゴを置くことができ、それ以降は順番が来たらサッとカゴを置くようになったそうです。

 

このように、校内だけでなく、地域の協力を得ることにより、子どもは大きく成長できます。

 

何を学ぶか

 

教科・科目の新設や内容の見直し

 

例: 理科と社会は、災害と関連付けて指導する。例えば、中州でBBQをしていて、大雨が降ったらどうする?中州の地形を理解していれば、「即逃げる」という判断ができる。

 

●どのように学ぶか

 

アクティブラーニングの視点からの学習過程の改善。

 

例: 40人クラスで分からない子がいたら、教師は指導法を変える必要がある。

 
 

⑤小学校の先生って、発達障がいの知識と理解はどのくらいあるの?研修はされているの?

 

「家庭と教育と福祉の連携」については、現在開発中。

 

今後の教師への福祉的な研修の実施についても課題になっている。

 

私が元小学校教諭と現役の小学校教諭から聞いた声によると、「発達障がいについての知識や理解がある小学校教師は多くない。なので、保護者から色々なことを学びたい。」ということです。なので、先生方は非常に苦労されていることと思います。

 

自分の子どもの成長を見ていて感じるのですが、出来ないことができるようになっているのは、毎日長い時間預かっていただいている今の幼稚園の先生たちの理解があり、適切に対応して下さっているからです。家庭での親の力だけはどうにもならないんです・・・

 

ですので、学校の先生方への福祉的な研修がなるべく早く実施されることを望みますが、当事者の親も積極的に発達障がいについて学ぶことが必要です。そして、預かっていただく先生方に積極的にお話をすることが必要です!

 
 

⑥「医師の診断」がないと特別な支援は受けられないの?

 

いいえ。医師の診断の有無にかかわらず、個々の児童の障害の特性や状態などを踏まえ、教育上の支援が必要な児童に対して指導計画を作成することが義務付けられています。

 

ですが、現状は、⑤のように先生方の発達障がいの知識や理解はまだ深くないです。なので、保護者は先生と綿密にコミュニケーションを取り、積極的に子どもの特性や能力についてお伝えしなければならないなと感じました。

 
 

⑦文科省の資料は長くてよく分からない・・・もっと簡単に情報を知る方法は?

 

文科省の情報をリアルタイムで知りたい方は、「文部科学省 新着情報 メルマガ」で検索し、登録をしてください。

 
 

⑧最後に、田中氏の研修を受け、発達障がいの子を持つ親としての気付いたこと

 

全員が学ぶ機会がある義務教育の中で、すぐ身近に必要とされている福祉について学ぶ時間があればなあと感じました。

 

田中氏が例を挙げられたのですが、盲目で白杖をついている方は、「迷ったり何か困ったりしたら、杖を上に挙げなさい」と教えられています。ですが、その意味を知らない周りの人がそれを見たらどう思いますか?

 

「何か助けを求めているのかな?」と何となく気付いて声を掛ける人もいれば、

 

「怖いから気付かない振りをしよう。」という人もいるでしょう。

 

特に、何も知らない子どもが見たら、「怖い!」と逃げる子もいるでしょうね。

 

このように、障がいを持つ当事者だけではなく、そうでない人も福祉的なルールを知らないと意味がありません。

 

最近、色々なヘルプマークを付けている方を見るようになりましたが、それぞれに一体どのような意味があるのか、その人はどのようなヘルプを必要としているのかを知らなければ、付けていても意味がありません。

 

これって、小学校の社会で地図記号を覚える感覚で、ヘルプマークとその意味を覚えてテストにしてもいいのではないでしょうか。

 

私は、発達障害を持つ子の親として、「特別に扱ってほしい」と思ったことはありません。ですが、将来、生活面で自立できるように手助けをしたいなと思っていますし、他の当事者の方々に対しても同じように思っています。

 

現在、全国の学校で特別支援を必要とする子供は44万人で、実際に特別指導計画の基で教育を受けているのは38万人です。6万人の子どもに関しては、主に「保護者が特別支援は必要ない」と言われるケースです。

 

この数字は、学校の普通級にも何らかの発達障がいを持つ子が普通に在籍することを意味しています。

 
 

今回、3連休なのにも関わらず、田中裕一氏は呉市だけではなく、連日で鹿児島でも研修会を実施されました。
そして、参加者に用意して下さったのは、24ページにもわたる資料!

 

休日を削ってまで「みなさんに知って欲しい」という思いで、とても分かりやすくて面白いお話をするために呉市まで来てくださいました。

 

このような熱意のある方が文部科学省にいらして、しかも特別支援教育のガイドラインや計画を作っておられるということを知り、安心しました。

 

そして、今回のイベントに協賛されていたのは、地元のスーパーや歯科医院などの地元の民間企業であったことにも感動しました。

 

「地域の協力で教育を改善する」という働きかけが現実になっています!

 
そして、私は、微力ながら小学校での読み聞かせボランティアとして登録をするつもりです。

 
地域の子どもたちの教育のために自分ができること、色々なお困りごとがある人たちをどのように手助けができるのか、

 
これからも知識を付けて実践していこうと思います。

 

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4 thoughts on “文部科学省の田中裕一さんから聴いた特別支援教育の現状と未来

  1. 賀谷尚代 より:

    こんにちは!DeCo a BoCo 共同代表の賀谷と申します。
    今回の講演に参加いただいたこと、またこのような報告を発信していただいたことに感謝いたします。本当にありがとうございます。
    私自身も学習塾を運営しており、子どもたちが少しでも勉強に対して前向きになれるよう、一人ひとりに向き合って日々一緒に学習を進めている毎日です。
    これからも情報を共有し、子どもたちの楽しい学校生活のために頑張ってまいりましょう。今後ともよろしくお願いいたします。

    1. miki-eigo より:

      賀谷さま

      コメントをいただき、ありがとうございます。私も娘が発達障がいであることがきっかけで、運動療法とか心理学について学ぶようになり、いかに自分が人間でありながら人間について知らなかったかということに気づきました。特別支援教育については、療育の保護者勉強会で経験者のお母さん方から色々と聴いてはいましたが、田中さんのお話を直に聴けて良かったです!今回は、私の理解している限りでブログにまとめたので、知識不足であることを書いてあるかもしれません。何かお気づきの点がありましたら、お知らせください^^また勉強会などがありましたら、参加させていただきます!

  2. 稲垣ファミリーホームの稲垣です。

    わかりやすく、まとめられていて感動しました。
    私も当日参加していました。
    講演後、田中氏に質問したのが、私です。

    私は里親です。発達障害で養育困難な子ども達を国から6人お預かりして、成人するまで育てています。
    里親歴35年、ファミリーホームが国の制度化されて10年、広島県内では第一号認定のファミリーホームです。
    ダウン症の子は特別支援学校に通っています。 支援級の子もいます。
    来年、その子も特別支援学校の高等部に入校する予定です。

    いつもアンテナを張って、いろいろな研修に参加しています。

    昨日も、アセスメントに基づく性的虐待防止策~
    午後から~ワールドカフェー方式~「性に関するテーマについて議論する」の研修に福山まで行ってきました。
    facebookに掲載しています。
    fasebookをされているようでしたら友達申請していただければ見ることが出来ます。

    今後とも情報共有していきましょう。
    よろしくお願いいたします。

    1. miki-eigo より:

      稲垣様
      コメントをいただきありがとうございます。そして、お返事が遅くなり大変申し訳ありません。
      里親歴が35年もおありなのですね!私はまだまだ勉強不足なのですが、仕事柄、そして自分の子どもが発達障がいであることがきっかけで、数年前から反射統合遊びと理論、キッズコーチング、療育の保護者勉強会などで少しずつ知識を付けています。
      田中氏の勉強会でもありましたが、学校への福祉的な研修はまだ開発中であり、実際に生活していても、例えば医師の子どもに対する対応を見ていると「発達障害を知らないのだろう」と感じることがあります。それなら親が勉強しなければいけないと思い、できるだけ色々な勉強会に参加するようにしております。

      稲垣さんご夫妻の活動に感動しました。これからもどこかでお会いすることがあるかと思うのですが、色々とご指導のほどよろしくお願いいたします。

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